『ゲノム編集ー神話と現実:煙幕の中のガイドブック


 「外来の遺伝子を挿入しないので、遺伝子組み換えではない」「自然の変異と区別できない」「短期間で効率的に新品種が作れる」ーゲノム編集をめぐるさまざまな言説が日本を覆い尽くしています。
 しかし、科学的に検証された事実を基に、こうした言説が根拠を持たない神話に過ぎないことを明らかにしたのが、欧州議会に提出されたこのガイドブックです。
 ゲノム編集されたトマトだけでなく、世界でも例のないゲノム編集魚の流通までが認められてしまった日本でこそ、このガイドブックは必要だということで、日本語版を作成しました。

 このガイドブックは欧州議会Greens/EFAが出版した“Gene Editing - Myths and Reality: A Guide through the Smokescreen”の日本語版です。長く市民の立場から科学者たちの見解に基づいてバイオテクノロジー技術への批判活動を行ってきたNGO、GMWatchのクレア・ロビンソン氏が、分子遺伝学者のマイケル・アントニウ博士のアドバイスの下、膨大な科学論文を踏まえてゲノム編集食品に関する企業側の宣伝が事実とは大きく異なっていることを検証したもので、2021年2月に欧州議会で報告されました。

 8つの章からなり、バイオテクノロジー企業による宣伝文句「神話」と科学者の研究などから明らかになった「現実」とが比較された後、その解説が続き、最後に参考文献が示されます。どの章も独立性が高いので、関心のある章から読み始めることができます。

 ぜひご活用ください!

推薦のことば


河田昌東さん(遺伝子組換え情報室、分子生物学者)

 現在、日本では高GABAトマト、マッスル真鯛、高成長トラフグ等3種類のゲノム編集生物が政府に届け出認可され、世界でも突出した状況である。本書はEUの現実と科学的研究を基に、ゲノム編集は今も未解決の問題が多く危険な技術であることを分かりやすく解説している。

 ゲノム編集はそのプロセスが従来の遺伝子組換えと同じであり、自然突然変異と同じという主張は明らかな欺瞞である。にも拘らず国内ではゲノム編集が新たな技術で経済成長につながる、との報道が多く既成事実化が進んでいる。

 こうした状況は50年前に原発が初めて導入された頃の状況にそっくりである。原発は当時から事故の危険性や廃棄物問題が指摘されていたが、「核の平和利用」「原発は未来のエネルギー」という宣伝でかき消された。その結果は言わずもがなの現状である。未解決の部分を残したまま新たな技術を採用する事は未来世代に大きな脅威となることを改めて認識したい。

天笠啓祐さん(日本消費者連盟顧問、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン代表)
 いま日本は、ゲノム編集大国化しつつある。その最大の要因は、国が先頭になって開発を進め、しかも規制を行わないことを決めたからである。

 現在、研究・開発、市場化が進められている作物や魚の大半が、国が肝いりで進めているイノベーション戦略で取り組まれてきたものである。その背景には、AIやバイオテクノロジーに依存する「ハイテク立国化」へ突き進む国の政策がある。そのイノベーション戦略の中で、ゲノム編集を規制しない圧力がかけられた。その根拠とされたのが、ゲノム編集は外来遺伝子を挿入するものではなく、ゲノム編集を行ったかどうかわからない、というものだった。そのいずれも科学的根拠がないことを、この本は的確に指摘している。

 ゲノム編集技術を応用した食品が、どれほど安全性に問題があるかを詳細に示している。

 ぜひ多くの人に読んでもらいたい本である。
久保田裕子さん(OKシードプロジェクト共同代表、日本有機農業研究会理事)

 ゲノム編集食品ボイコットの強い味方ができた!
 市民の直観による批判と同時に、その科学的な裏付けがあれば、大きな力になる。本冊子は、ゲノム編集作物(生物)の安全性・環境影響・農業影響などの論点について、推進者の言っていることは「宣伝」であり科学的根拠に基づかない「神話」(つくりばなし)だ、と反論する。
 本文は簡潔でわかりやすく、そして、反論のそれぞれに論文等の根拠が示されているところがすごい。気候変動に対応する品種や農法についても、ゲノム編集技術での対応が喧伝されているが、伝統的な育種や在来品種、有機農法やアグロエコロジー(日本でいう「有機農業」とほぼ同じ)でこそ、有効に対処できることが多くの科学的根拠をもって示されている。
 周囲の方にも、ぜひ、勧めていただきたい。
中村陽子さん(OKシードプロジェクト共同代表、メダカのがっこう代表)

 どんなに冷遇されても、ゲノム編集など遺伝子操作が生命にもたらす影響を研究してくださっている研究者の方たちがいます。

 この本は彼らの研究の要旨を簡単にまとめてくれたものです。私たち大人の使命は、子どもたちに健康に生きられる環境と安全な食糧を残すこと。それには今ここで、誰かが何とかしてくれるという甘えを捨てて、「子どもを守る」ことを始める強くて優しい日本人になりたいと思いました。

目次



  1. ゲノム編集は遺伝子工学であり、品種改良ではありません。

  2. ゲノム編集は正確ではなく、予測できない遺伝的エラーを引き起こします。

  3. ゲノム編集は、自然界とは異なる遺伝子変化を引き起こします。

  4. ゲノム編集には危険があり、その産物は安全ではない可能性があります。

  5. ゲノム編集された食品は検出可能です。

  6. 遺伝子操作技術は大企業が保有し、支配しています。

  7. ゲノム編集は、望ましい結果を得るための迅速かつ確実な品種改良方法ではありません。

  8. ゲノム編集は、リスクとコストが高く、食や農の問題に対する成功した実績のある解決策から遠ざかってしまいます。

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翻訳: 印鑰 智哉
翻訳協力:天笠 啓祐、廣内 かおり
編集協力:原野 好正
デザイン協力:古屋 純
A4版52ページ
2021年12月24日発行


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