第3回学習会報告 未来へ有機のたねを繋ぐ


2/10に行われた学習会『種から育てよう~有機のタネの採り方・育て方~』に参加された、富士山麓有機農家シードバンク 鈴木一正様に報告記事を書いていただきましたので、ご紹介します。


【未来へ有機のたねを繋ぐ】
 OKシードプロジェクト第3回学習会「林重孝「『種から育てよう―有機のタネの採り方・育て方』の世界」(2022年2月10日オンライン)を視聴しての報告


 みなさま、野菜はどこで買っていますか? 大手市場に流通している野菜のほとんどが、そのタネは海外産であることを知っていますか?
 野菜には産地が表示されてますよね。産地表示はタネにもあります。農家さんが普通にタネを採って育てていると思いますよね。今やタネを営みとして繋いで育てている農家さんはとても少ないのです。しかも有機のタネは更に貴重な存在でもあります。

 今回は、日本有機農業研究会の副理事長を務め、『種から育てよう―有機のタネの採り方・育て方』(発行・日本有機農業研究会)の書籍の発行にも携われた、林重孝(はやししげのり)さんの学習会に参加しました。
 林さんは、年間約70品目もの有機野菜を自家採種されています。70品目ものタネを繋ぐのはとても大変なことで、これほど自家採種されている有機農家さんは少ないと言えます。何故なら、現代の生産性効率性重視の農業にはそぐわない要素を持ち合わせているからとも言えます。

 例えば人参は春先には収穫を終えて、その場所は夏野菜用に準備に入るのですが、タネを採るとなると花が咲いてタネを実らせるまで待つ必要があります。タネを繋ぐ場所が必要になり、タネが実ればタネ採り作業をし乾燥させ調整作業を経て瓶に入れて記録を取り保管する。大変ですよね。
 しかも、交雑(他の品種とかけ合わさってしまい変異する)のことも管理しなければなりません。
 しかし林さんは、保存方法とタネの寿命と野菜の特性を上手に活用して繋いでいました。

1)タネは冷蔵か冷凍して保存
 原則、温度、湿度を下げるほど保存性が良くなる。
 冷蔵か冷凍して保存することでタネの寿命が長く維持でき、冷凍の場合は20年は大丈夫とのこと。驚きです。
 冷凍保存することで、毎年70品目をタネ採りする必要が無くなるわけです。20年以内にタネ採り更新すればよいと考えれば、年間数種類で済みます。出来そうに感じ始めました。
 富士山麓有機農家シードバンクでは、たねの循環を重視しているので、現在全て常温保存です。そのため、3年に一回は更新しなくてはいけません。とても大変です。気候危機で栽培が不安定になりタネが採れない時もある中、不測の事態に備えて一部は冷凍の技術を取り入れることも今回のお話しで考えさせられました。ちなみに理想的な冷凍温度はマイナス20℃だそうです。冷凍から出す時は結露に注意して、先ず冷蔵に移してそれから常温に移行させてから使うこと。

2)交雑に注意する
 交雑しやすい品種とし難い品種を知ることが大切ですね。
 基本的に同じ品目であっても品種が違えば交雑の可能性がある。違った品目であっても近縁種は交雑する。
 アブラナ科はアブラナ属、ダイコン属、ワサビ属、エルーカ属に分類され属が違えば原則交雑しない。からし菜、カキナ、のらぼう菜は近くに育てても交雑しない。
 花粉は風に乗って移動が出来ますし、ミツバチも半径2キロの行動範囲を持ちます。そのため、私たちシードバンクの畑では、変わった野菜が登場したりします。根っこはカブで葉っぱは水菜、オレンジ色の混じった美しいカボチャ、葉っぱだけのカブ、などとある意味予期せぬ交雑も楽しんでいたりします。
 林さんは、2004年に茨城県鹿島港で遺伝子組み換え菜種のこぼれ種が自生しているのを農林水産省が調査発見して問題になった後、近くを走る千葉県内の国道51号線成田から佐原にかけて遺伝子組み換え菜種が自生しているとの環境省調査を知り、有機農業者仲間で自生遺伝子組み換え菜種の引き抜き活動をしたそうです。そして、遺伝子組み換え菜種と交雑の恐れがあるかもしれないと、自身の畑のアブラナ科の採種を一時中止したことがあったそうです。
 これからはゲノム編集作物がいつどこで栽培されるか分からなくなってしまうと、私たち自家採種を実践している者たちには不安が募ります。

3)自分好みの品種
 自分好みの形質で選び、繋ぎ続けることで自分好みの品種になることができることも自家採種の醍醐味です。どこに自分の視点を置いて繋ぐのかで色、形、成長も変化してくるそうです。ただし、選抜が偏りすぎると、遺伝情報が偏り弱くなる(自殖弱性)傾向があるので、違う形質のものを適度(20%位)に混ぜることが生命体の多様性を確保することに繋がるようです。深いですね。

 以上、林さんのタネ採りの代表的な3つのポイントを紹介させていただきました。
 現代は流通している種苗はF1(一代交配種)が主流になっています。そのほとんどが海外産である事実。
 地球規模で起きている気候危機が、タネから海外依存型の日本に及ぼす影響は想像できます。
 今、タネが人類の都合で不自然で持続不可能な方向へ向かいつつあります。
 有機で地域のタネを繋ぐことが、これからの持続可能な未来へ繋げることができる鍵ではないのでしょうか。
 タネを採ることは、それ程ハードルの高いことではありません。先ず、採りやすい豆類から始めてみてはいかがでしょうか。

 最初にタネが採れた喜び、それが3年も繋ぐとそのタネは家族のように見えてきます。春にたった一粒のタネを大地に降ろせば、秋には数千粒にもなり、私たちに恵みを与えてくれます。
 タネは私たちに豊富な恵みを与えてくれる地球からのギフトなのです。
 私たちはタネの星に生きているのです。共にタネから持続可能な未来を創造していきましょう。春から一緒にタネを蒔きませんか?
 タネを繋ぐ営みと知恵を教えていただいた林さんに感謝いたします。

富士山麓有機農家シードバンク 鈴木一正


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