3/10学習会報告『ゲノム編集 神話と現実』の最新情報を学んで


 2022年3月10日に行われた学習会『「ゲノム編集 神話と現実」の最新情報を学ぶ』に参加された、富士山麓有機農家シードバンクの鈴木一正様に報告記事を書いていただきましたので、ご紹介します。

 3月10日に行われた第4回目の学習会は『ゲノム編集 神話と現実』の日本語版出版を機に、河田昌東さん(名古屋大学理学部で遺伝子の基礎研究をされ定年退職。遺伝子組換え情報室代表。専門は分子生物学、環境科学)に「ゲノム編集の何が問題か」をテーマにお話いただきました。河田さんは現在ウクライナの戦争で心配されているチェルノブイリ原発の問題に取り組むNPO法人「チェルノブイリ救援・中部」の理事も務められています。

 最初に、遺伝子組み換え作物の話から除草剤グリホサートの発癌性のこと、これに伴う数々の訴訟問題やアメリカのお母さんのnonGMO活動や発達障害への影響など、今や遺伝子組み換えビジネスが失敗の道へと向かっていることのお話がありました。
 そして今、”革命的な“新しい遺伝子操作技術として「ゲノム編集」が注目されているのです。

 日本政府は「ゲノム編集」を成長戦略のど真ん中に位置付け、ゲノム編集食品の社会実装に力を注いでいるのです。そして世界に先駆けて「GABA高蓄積トマト」、「肉厚真鯛」、二倍の速度で成長するトラフグの商品化を実現させました。他にも芽に毒を持たないジャガイモ、低アレルゲンの大豆、共食いしない養殖用の鯖などがゲノム編集技術により開発されているそうです。

 なんだかゲノム編集技術が私たちの食へものにもたらす恩恵がたくさんあるように感じますね。GABAをたくさん摂取して血圧を下げて、回転寿司で安く真鯛が食べられたり、ふぐ料理コースだって家族で楽しめる。嬉しいですね。
 政府は、ゲノム編集技術により外来遺伝子が残存しないものは自然界における突然変異と変わらないとして、安全性審査が必要なく、表示義務も「無し」としました。自然界と変わらないのですから安心安全ですね。
 さて、本当なのでしょうか?

 河田さんは次のように指摘されています。
・狙った遺伝子の配列を切断するハサミは一つではなく100万個以上細胞内に注入する。
・狙った遺伝子の配列に近いものも切断してしまうオフターゲットが起きる。
・自然界の突然変異では同じ遺伝子の配列が同時に壊れることはない。
・ゲノム編集技術は機能している遺伝子の配列を人為的に壊す。

 たしかに、自然界の突然変異と同じとは言い難いと思いませんか?

 河田さんは、さらにこう指摘されます。
・一つの遺伝子が一つの機能を有するのでは無く複数の機能を有するので、一つの遺伝子を破壊すると他の遺伝子の構造や発現にも影響する。
・Cas9でゲノム編集できた細胞は発癌抑制遺伝子が少なく、癌になりやすい。
・ゲノム編集で必要になる選択マーカー遺伝子に発光クラゲや抗生物質耐性遺伝子が使われている。
・抗生物質耐性遺伝子は食べると腸内細菌に影響して抗生物質耐性になり、これが原因の死亡者が世界で増えている。(遺伝子の水平移動)
・腸内細菌と脳は関係が深く、脳への影響が大きい、など。

 なんだか不安な気持ちになってきました。
 政府の言っていることをそのまま信じて良いのでしょうか?

 ゲノム編集技術により私たちの食への恩恵がたくさんあるようにメディアは報道していますが、リスクは何も言いませんよね。ゲノム編集はイメージ戦略でデザインされた造語で正確には遺伝子破壊だと思います。
 気になる方、家族を愛するあなた。エビデンス(科学的根拠)に基づく詳細が書かれた『ゲノム編集 神話と現実』(OKシードプロジェクト発行)を読んでみて下さい。
 現実を知れば知るほど、ゲノム編集された生物と食品は不自然で必要ないと感じます。自然界の突然変異と判別できない理由で表示をしないという考え方は間違えていると思います。自然界の突然変異と判別できないからこそ明確な表示と徹底したトレーサビリティが必要です。
 これは、予防原則の考え方に立てば当然であると思います。人間は間違いを起こす生き物なのです。

 私は有機農家であり、昔から繋がれてきたタネを守るシードバンクの活動をしております。ゲノム編集作物は表示義務もなく何処でも栽培できることになってしまっています。種苗にも表示義務がありません。そのため、隣の畑で知らずにゲノム編集作物が栽培されて、私たちの有機野菜と交雑してしまう可能性のある環境になります。私たち同志も知らずして栽培してしまう可能性さえあります。これはオーガニックを志す方々にも大きな問題です。
 なによりも、人為的に遺伝子操作された生物を自然界に放出してしまうことはやってはならないことです。遺伝子の配列は人類が考えたのではありません。いったい誰が何の目的でそのDNAの仕組みを生み出し、その配列を考えたのでしょうか?人 類には永遠にわからないことだと思います。
 私たちは、物質の核の部分を操作し原子力発電という安全でクリーンなエネルギーを手にしたつもりでした。それが、震災で最大の負の遺産として子どもたちの未来へ残すことになったのです。今度は生命の核の部分を操作し始めているのです。

 地球規模の気候危機、ウイルス、そして戦争に直面している今、人間中心主義ではなく地球中心主義へ移行していかなければいけない時だと感じています。

 アメリカの先住民は7代先を考えて今を選択するそうです。
 あなたは次の世代に何を残したいですか?

 河田昌東さんのお話を聞いて私たちは真実を知ること、そして考えることが大切であることを学びました。
 河田さんありがとうございました。
 
   富士山麓有機農家シードバンク 鈴木一正





【おすすめ動画と関連書籍について】

 『「ゲノム編集 神話と現実」の最新情報を学ぶ』をテーマにお話しいただきました講師の河田昌東さん(分子生物学者)の同様の講演会記録動画は、次にあります。(今回の学習会動画は配信しておりませんので、次をご覧ください。)

 河田さん所属の「遺伝子組換え食品を考える会」より、動画「ちゃんと知りたいゲノム編集食品」
 → http://gm-chubu.sakura.ne.jp/220127-kawata.htm

 OKシードプロジェクト発行の『ゲノム編集 神話と現実』ガイドブック(54頁)は、次から無料ダウンロードできます。
 → https://okseed.jp/genomemyths.html

 なお、印刷された冊子希望者には、300円でお分けしています。
 → https://okseed.base.shop/

【学習会参加者の感想】
 学習会にご参加いただいた方の感想を共有いたします(一部省略・要旨のみもあります)。

・食欲の止まらないフグなどの魚類が海に大量に逃げたら食物連鎖が破壊されますね。
・ゲノム編集食品は表示義務がないので、消費者としては見分けることは不可能ということでしょうか?
・「22世紀ふぐ」は、ふるさと納税でも採用されていてびっくりしました 。
・ゲノム編集タイとふぐは、せめて表示してほしいと思います。
・ゲノム編集は、全て、人にとって都合の良い変異という観点でしか考えられていないのが気になります。(要旨)
・エキソンとイントロンのお話大変分かりやすかったです。ということは、放射線照射されたじゃがいもや、放射線による品種改良なども、ゲノム編集と同じようにたんぱくしつ異常などが起こりやすい危険なものなのでしょうか。
・難しいのでよくわからなかったですが、ゲノム編集は突然変異とは違うし、意図しない特性のものができるということはわかりました。
・オフターゲットの方が暴走?して本来のねらった所がスルーされて、想定しない様なゲノム編集になる。などは考えられるのでしょうか。
・国会でも話してほしいです。自分は有機農業をやっていたので、ゲノム編集を有機認証には絶対反対です。
・昨今、昆虫食も注目されていますが、昆虫のゲノム編集も行われています。
・難しい話をわかりやすくお話していただき、とても勉強になりました!
・科学は仮定して検証して結論を出すというだけのことだと思っているので、あくまで局所的、推測的な域を出ない範囲で論じているだけという気がしてしまいます。地球の調和は科学的にはまだ誰も説明できない、科学では解明できていないことがたくさんあると思います。感覚的に嫌だという感覚を大事にする世の中になったら、世界はカオスになると思いますか?安全性がオフターゲットだけではなく、感覚的に、あの筋肉質な豚の写真を見てから、それを食べることがなんとなく嫌だなということを大事にできれば、科学のあり方も人間も健全になると思うのは、大雑把過ぎる意見でしょうか。
・これはもう、おもいっきり反対していかないと、とんでもないことになりますね。
・すごく勉強になりました。また是非先生ご登場お願いいたします。
・とても勉強になりました。ありがとうございました。皆さんも書いている通り運動を広げていきたいですね。
・自分にできることをやっていきたいと思います。

  ご参加いただいたサポーターの皆さま、ありがとうございました。

 今後もOKシードプロジェクトでは、ゲノム編集や食に関する学習会を開催してまいります。サポーター登録(無料)をしていただいた方には、イベントのお知らせをさせていただきますので、是非ご登録ください。
 サポーター登録はこちら→ https://okseed.jp/supportus.html


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