オンライン学習会 『「雑穀街道」をFAO世界農業遺産に!』参加者からのレポート


9月22日に開催したOKシードプロジェクトのオンライン学習会『「雑穀街道」をFAO世界農業遺産に!』。
特別公開の動画はもうご覧いただきましたでしょうか?
「雑穀」を通して、食と農だけでなく、私たちの権利や社会そのものの課題まで見つめ、問いかける1時間20分。
講師の木俣美樹男さんの貴重なお話しを、字幕付きで視聴いただけます。

さて、今回、学習会にご参加いただいたtokotoko.10minutes_gardener(國本)さまに感想をまとめていただきましたので、共有させていただきます。
國本さま、ありがとうございました!

来年は「国際雑穀年」を迎えますが、雑穀はこれからの食と農の重要なキーワードです。
ぜひ、動画をご覧ください◎
みなさまの感想などもぜひお寄せくださいね!

◆動画はこちらから↓
https://www.youtube.com/watch?v=jucNJsWpivI
\チャンネル登録もよろしくお願いします!/

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《9月22日学習会報告》 
生物文化多様性の保全・継承を象徴する「雑穀街道」を世界農業遺産に
                tokotoko.10minutes_gardener(國本)

 
「雑穀」と一言で括れない奥深さ
 在来品種を絶やさないことの意味を学びたいと、木俣美樹男さん(東京学芸大学名誉教授)よる「雑穀街道」学習会に参加しました。
50年以上に渡り、日本と世界の各地を訪れて調査研究を重ねられてこられて得られた知識経験と、収集された多くの植物種子を守り繋いでいくことへの思い溢れる学習会でした。何より近代化以前、長くヒトの命を支えて来た優れた技術・文化としての「雑穀」を詳しく知ることができ、私自身、「雑穀」の一言で雑に括っていたのが、冒頭から「雑穀」と呼ばれる植物(穀類)の特徴、その種類の多さ、分布・生産地域の広がり、古く縄文時代からヒトによって栽培・食べられてきた長い歴史と変遷を聞き、驚きました。また、他の植物との比較で「雑穀」は植物全体として収量がとても多いことなど、優れた特徴を聞くと「雑穀」と単純に括って見ていたことが申し訳ない気もしました。 

 話しの内容は、「雑穀」から広がり幅広く現代社会の有り様をとり上げて課題を指摘される言葉からは、私達の日々の暮らしの基盤として、自立的に生きることを忘れてはいけない、自分が食べるものは自分で作る意思を持つことの薦め、投げかけも感じました。

 そのうち、特に印象に残ったコメントを幾つかあげてみますと
・「いざ、鎌倉」として有名な道の逆を辿ることを「いざ、山村(やまむら)」と表現して、都市の住人が中山間地にもっと関心を持って積極的に協力していく必要性がある。
・「生物多様性」という言葉に止まらず「生物文化多様性」という表現こそが妥当である。種子の保全継承を目指すとき、タネを貯蔵庫にしまっておくだけでは植物の進化が止まってしまう。畑での栽培、さらに、人が食べたり活用することで種子は繋がり、未来へ伝わっていく。
・在来種の保存・研究についても、独創的研究を蔑ろにしがちな日本の問題がわざわいしている。
・戦争について、日本軍では戦死者よりも飢餓による死者の方が多いのが実態だった。
・今の日本国憲法に足りない点として、「予防原則」「生命倫理および環境倫理の確立」、「自然を享受し生業を営む権利を明記することが必要」、また「国は、・・・国民を飢餓に合わせない責務を持つ」などを 日本国憲法へ加筆した方がよい。 
 
「雑穀街道」の歴史の広がり
 さて、学習会中盤からは、特に「雑穀街道」上にある各地域・山村について、調査・研究された成果を具体的・詳細に話していただきました。この地域の重要性を知る上で、小菅村・相模原市の栽培地の様子や調査に携わっている方たちの研究・保存継承活動についても当時の貴重な画像を示して詳しく説明されて具体的な調査研究の話しはとても興味深い内容でした。実際栽培されている畑から縄文土器が出土している地域の様子を目で見ると、地理的歴史的に重要な場所であると実感します。そして、インドの学者シタラムさんが提唱し、FAOで2023年国際雑穀年が採択された経過とその意義・目的のお話、また、篤農家橋本光忠さんの「自分の代でタネを切らしてしまうことは先祖に対して恥ずかしいことだ、100年に1回飢饉がある。その時のためにタネは保存しなくてはいけない。タネは切らしてはいけないんだ」との言葉を紹介されるなど、他では聞くことができない貴重なお話、映像の数々でした。
 一方で木俣さんは、植物の保全のために重要な要素とされる食文化の面から、雑穀を使った商品開発に自身で取り組まれています。また、海外の健康食志向の例も交えて、棡原(ゆずりはら)地区の長寿についての健康・予防医学、栄養学研究について解説されており、「雑穀」の栄養的価値、その有効な食べ方を知ることができ大変参考になりました。全粒粉・胚芽の活用、発酵食、一物全体食など、「病気になってお医者さんに行くのではなくて、病気にならない健康予防医学が大切」、ということです。

 学習会メインテーマ「雑穀」を鍵として、秩父市、丹波山村、そして小菅村から上野原市・相模原市までの山村地域の様子を聞くと、これらの地域間の繋がりはまさに「街道」と呼ぶに相応しく、また、地域にまだ今なら残る生産と生活が、今後失われないようにと思われている木俣さんの活動が、私たち・ヒトにとってどれほど大切な活動であるかを知ることができました。日本で、今、雑穀の生産が続けられている地域としては生産量から見て一番であることから、今後失われないよう保全に力を尽くすためにもFAO世界農業遺産の登録の意義は大変大きいと思います。
 「雑穀街道」という名称でこれらの地域を呼び、その地域が未だに残している生態的・文化的価値を以て、世界農業遺産への登録・継承を目指す活動の意義を、木俣さんの熱い思いと共に、多くの人々に知っていただきたいと思います。

 「雑穀」の食べ方を失っている私たちの暮らしに課題
 「雑穀」は、一年草でありながら、種子の形で長く生命を保つ特性を持っているそうで、私たちのこれからの将来にとって貴重であり、希望を感じます。雑穀をベースにして暮らし多様な雑穀に頼って生きていた人々の思いを引き継げていない大多数の現代人にとって、「雑穀」とは、私たち・ヒトにとってどんな価値を持つのか、もっと知るべき歴史と価値があると思いました。 
 今では、その食べ方・調理法という文化を喪失してしまったのではないかと思われるほど、食べる機会は限定されていると感じます。ちゃんとした調理法・食べ方、つまり食文化が失われてしまっている現代の私たちの暮らしに大きな課題があると言えます。
 「雑穀」について、木俣さんの研究・活動の成果を聞き、昔の人々は、それぞれの穀物に合った食べ方・調理法・食文化を持っていたとわかります。それらの文化を取り戻す作業が、タネの保存と共に重要であると強く強調されました。食物を中心とした文化の多様性が人の未来を守るといわれているのだと思います。

 在来品種の種子は生きた文化財であり社会的共通財
 米以外の雑穀が、世界各地、また、日本列島に住む私達の食を支えてきたことを知って、日本の文化にとって重要な存在であったと気づきました。今回の学習会は「雑穀」の奥深い世界を見る機会となりました。今や、残念ながら私の住む地域ではほぼすっかり目にすることがなくなってしまっている現状ですが、木俣さんのお話をお聞きしたことで日常の食や文化、儀礼、社会の成り立ちについて、さらに深く知りたいと思い、知識を得て在来種子を保存・継承するための活動に向き合いたい気持ちなりました。微力ながら、「雑穀街道」のFAO世界農業遺産登録の意義を伝えていきたいと思います。

 最後に木俣さんが語られたのが、
「食料は自分で作るのが生き物の原則」、
「雑穀や在来作物の種子継ぎをしてきた篤農に敬意を持って感謝する」、
「在来品種の種子は生きた文化財、社会的共通財」。

 OKシードプロジェクトの活動指針をわかりやすい言葉で共有できた意義深い学習会となりました。

                                     以上

★雑穀街道を FAO 世界農業遺産に登録しましょう!
賛同はこちらから→  http://www.milletimplic.net/milletsworld/milletstrasse/approval22827.pdf


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