OKシードプロジェクトのこれまでを振り返る

 2022年もあとわずか、この時に、これまでのOKシードプロジェクトの歩みを振り返ってみたいと思います。

 「ゲノム編集食品の流通が始まってしまう。しかも何の表示もなしに。タネも遺伝子操作されているかどうかもわからなくなってしまう」という強い危機感のもと、なんとかしなくては、と食や農、タネの問題に懸念を寄せる相談会から始まったOKシードプロジェクト、タネから食品までゲノム編集でない食品にOKシードマークを貼ろうと2021年7月20日から活動を正式に開始しました。

OKシードマークの拡がり

 おかげさまで、北海道から沖縄まで生産者、生協、食品店など165の方々にお使いいただくまでになりました。まだまだ店先でよく見かける存在になっていませんが、より多くの方々にご参加いただき、着実に広がりつつあります。この活動は日本だけでなく、遺伝子組み換えやゲノム編集問題に取り組む世界の市民団体にも伝わっています。

開いた学習会14回、ガイドブック『ゲノム編集ー神話と現実』無償公開

 まず最初に私たちが直面したのはなんといっても多くの人が「ゲノム編集って何?」「何が問題?」ということが伝わっていない問題でした。そこでOKシードプロジェクトではオンライン初心者講座を2021年9月以来、8回に渡り、サポーター登録された方を対象に参加無料で開催してきました。

『ゲノム編集ー神話と現実』表紙  ゲノム編集食品にどんな問題が起こりうるか、推進する政府や企業の宣伝文句にはどんな問題があるのか、それを科学的なデータに基づき検証した『ゲノム編集ー神話と現実』(原題 Gene Editing - Myths and Reality: A Guide through the Smokescreen)の日本語版を作成しました。欧州議会で使われたこのガイドブックは数多くの研究論文に基づき、ゲノム編集によって起きるさまざまな危険に焦点をあてたもので、世界的にも高く評価されています。このガイドブック日本語版をPDFで無料公開しました。印刷版も1冊300円+送料で頒布し、このオンライン版と印刷版の読者はすでに1万人を大きく超えています。
『ゲノム編集ー神話と現実』詳細・ダウンロード・オンラインショップ

 そして、タネや農業を守るためにはどんなことが必要か、ゲノム編集以外を含むテーマを追求した学習会も開いており、すでに6回開催しています。そのテーマは「木更津市のオーガニックなまちづくり条例による学校給食の有機化」(木更津市経済部農林水産課 野村洋貴さん)、「品種名が消えた「雑穀」―歴史と今後の課題」(岩泉好和さん、特定非営利活動法人Axis委員会連合会長)、「種から育てよう―有機のタネの採り方・育て方」(林 重孝さん、日本有機農業研究会副理事長)、『ゲノム編集―神話と現実』の最新情報を学ぶ(河田昌東さん、遺伝子組換え食品を考える中部の会代表)、「命のたねを未来につなごう―富士山麓有機農家シードバンクの取組み」(鈴木一正さん、富士山麓有機農家シードバンク)、「『雑穀街道』をFAO世界農業遺産に! 山村の小規模農耕における生物文化多様性を保全する」(木俣美樹男さん、東京学芸大学名誉教授、農学博士)と多岐にわたっています。

 合計14回の学習会には100人を超える参加者をいただいており、延べ参加者数は1500人を大きく超える方に直接問題をお伝えすることができたと思います。今後もこの活動は強化していきたいと思います。まだサポーター登録されていない方は、ぜひサポーター登録いただき、学習会にご参加ください。メールにて、お知らせを毎月1〜2通お送りします。無料です。サポーター登録
 OKシードプロジェクトの主催の学習会以外にもさまざまな市民団体や生協主催の学習会に協力させていただいています。

ゲノム編集トマトの苗を福祉施設や小学校へ?

ゲノム編集トマト苗への要望書への自治体対応マップ

 これまでに大きな問題にOKシードプロジェクトは直面してきました。中でもゲノム編集トマトを開発したサナテックシード株式会社とその親会社であるパイオニアエコサイエンス株式会社が、そのトマトの苗を福祉施設や小学校に無償配布するという計画を9月に公表していたことを「くまもとのタネと食を守る会」のメンバーから10月に知らせていただき、さっそくOKシードプロジェクトはオンライン署名活動を開始しました。オンライン署名は1万人を超える数の参加者を得て、この計画を作った両社と当該都道府県に送っています。
 そして、この問題では「北海道食といのちの会」が北海道の全179市町村に要望書を送り、39の市町村が安全の確認されていないトマトは受け取らない、という回答を得ました。今年の1月27日にはOKシードプロジェクトが音頭を取って全国の地域のグループのみなさんといっしょにオンライン記者会見を開き、地方紙や週刊誌を通じて、この問題が広く市民に伝わるきっかけを作ることができました。この動きは、全国に拡がり、24都道府県で受け取り拒否自治体が生まれ、4県でも自治体への働きかけが始まっています。詳細

 こうした活動を通じて自治体の担当者の方たちがゲノム編集食品問題の存在を初めて知ったというケースが多々あります。地方自治体と住民が対話する中で信頼関係が生まれたケースが多々あります。一方で、小学校だけでなく、一部の高校などでゲノム編集食品をバラ色に描く授業が行われていることがわかっており、一方的な押し付けが学校で起きないようにするために、地方自治体関係者や学校関係者とも対話していくことが必要になっています。今後もOKシードプロジェクトではこうした情報をフォローアップしていきます。

2023年4月「遺伝子組み換えでない」表示がなくなる、そしてゲノム編集魚養殖の拡大問題

 まだまだ問題は続きます。2023年4月からの食品表示法の改正実施に伴い、「遺伝子組み換えでない」という表示が消えようとしています。アメリカなどではNon-GMO Projectなどの民間代替認証が広まって、消費者は遺伝子操作食品を避けることができるのに、日本ではそのような制度は進んでいません。この問題をOKシードプロジェクトとしてどう取り組めるか、議論を始めています。新年1月24日にはこの問題の学習会も企画しています(参加は無料ですがサポーター登録が必要です。サポーター登録 )。

 そして、日本は世界で唯一、ゲノム編集魚を流通させている(今のところオンライン販売やふるさと納税の返礼品で使われているのみ)国ですが、このゲノム編集魚を開発したリージョナルフィッシュ社はその養殖プラントと稚魚と共に全国に販売し、さらにはインドネシアなどの海外にも進出する計画を進めていることがわかりました。
 現在、日本の沿岸小規模漁業は小規模農業と同様に厳しい状況にあります。そこにこのゲノム編集魚養殖プラントが広がっていくと大変なことになってしまうことが予想されます。この問題についても2月10日に宮津市で活動されている市民グループ「麦のね宙ふねっとワーク」のみなさんといっしょに学習会を企画しております。日本の小規模沿岸漁業を守れるように、そして進出予定先のインドネシアの市民とも協力できるように情報交換を進めていきます。

すべての活動がみなさまの寄付で実現できました!

 この一年半ほどの時間はあっという間に過ぎ去りました。サポーター登録や署名などを通じて、OKシードプロジェクトのニュースレターの読者は1万人を超えました。その中で、多くの成果を上げることができました。これができたのもみなさんの支援があったからです。これまで900人を超える方から810万円を超える寄付をいただきました。OKシードプロジェクトの活動はすべて、みなさんからの寄付で実現できています。ご支援いただいたみなさなにはこの場を借りて、お礼を申し上げます。

 今後、OKシードマークの有効性を上げるために、OKシードマークを大きく拡げる必要があり、そのためにはみなさまのさらなるご参加、ご支援が不可欠です。ぜひ、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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 2023年もどうぞよろしくお願いいたします!


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