養蜂、自然栽培に関わるものからみた「あきたこまちR」

 今、秋田県で日本を代表するお米「あきたこまち」を放射線育種米である「あきたこまちR」に2025年から全量転換してしまうという計画が進んでいます。
 この「あきたこまちR」の問題に対して秋田県在住のOKシードプロジェクトのサポーターである後藤純子さんが知人に声をかけ、取り組みを始められました。

 後藤さんがなぜ、そうされるに至ったのか、これまでにやってきたことや、やりたいと思っておられることを伺いました。

今までやってきたこと


後藤純子さん 養蜂修行中に恩師が農薬に真っ向から反対しました。それで15年前から10年間、みつばちにとって良い環境(有機栽培農場や自然栽培の野山)でみつばちを飼育し、ネオニコチノイド不検出・化学物質過敏症グループの人が食べても大丈夫なはちみつを生産していました。

 10年ほど前から女王蜂の寿命が短くなり始めました。養蜂の教科書「近代養蜂」では女王蜂の寿命は3~5年と書かれていましたが、長命だった女王蜂が1~2年で亡くなるようになったと、当時の東京都養蜂協会長も、講演の中で言及されました。試しに農薬不検出の環境で飼育してみましたが、女王蜂の寿命は長くなりませんでした。

 そこで、今の自然環境に向き合う人間の方法がどこか、大きくずれているのではないか、全体に考え方に問題があるのではないかと考えるようになりました。

 また、農薬の論文を探していて、たまたま、アメリカの人間の体内から、南極のペンギンの体内から、みつばちの巣の蜜ろう成分から、同じように2百数十種の化学物質が検出されたという論文を読みました。その論文は世界中どこも同じように汚染されている事実を伝えていて、自分には衝撃でした。

 今の自分がしている自然栽培の田畑をふやす活動は、生態系にそって農的環境を創っていくことを目的としています。山奥に在る畑地は、かつての田んぼです。耕作する人がいなくなり自然に戻ろうとしている場所には、今では珍しいといわれる昆虫もふつうに生きていて、多様性があります。みつばちが無理なく生き続けるのに困らない場所で、多様性を守りながら循環する農業を実現できたらと、日々、格闘しています。

 わたしはこうした環境問題全体の中で食の安全安心をもとめる活動を主としている先駆的なOKシードプロジェクトからの情報をよく参考にしてきました。とくに種苗法が改定されたことから、自然界から生み出され育てられてきた本来の在来の種を守っていくことに取り組みたいと考えるようになりました。種は育てられた時のことを記憶しているので、化学肥料や農薬を使って育てた作物から種取した種はその環境を欲するのでオーガニックな栽培ではうまくいきません。オーガニックで育てられた種苗交換会が必要でした。

 昨年、晩秋に種苗交換会を初開催することを、印鑰事務局長へ相談しました。賛同とアドバイスをいただいて、開催したときは、参加者一同がはかりしれない豊かな気持ちになりました。ひとりひとりが「自信をもって譲れる強い種を持参」し、「よその畑のうちにない多様性」を知り、交換して自分の種になりました。春にまいたその種は、発芽率が抜群によく、成長も安定しています。

 種苗交換会を、本年も開催し、輪を広げていきたいと願っています。

なぜ「あきたこまちR」の問題に取り組み始めたのか?

 
 以前から、秋田県から変わると日本中が変わると、なぜか思えておりました。だからか、呼吸をするように自然にこの問題に取り組み始めました。

 秋田県には、情報が届くとちゃんと対応できる人々がいます。最初はよくわからなくても、本当にわかったときは理解し解決方法を協力してくれるという局面を、わたしは何回か経験してきました。

 印鑰さんが「たいへんなことになる」とこの問題を発信はじめたとき、秋田県の、特に慣行栽培農家さんたちは、なにが問題なのかわからないといいました。でも、聞くと、大変なことになるとわかることを感じます。慣行栽培農家さんはほかに手がないので「追い詰められたように」なってしまいます。まだ情報が届いていない人は何が問題かわかりません。知らせていくだけでもちゃんと時間をとってできると、一人ひとりが考え、自分の言葉で発信します。何か動いていきます。なかには、戦争を呼びそうな言葉でやっつけようとする人も出ましたが、多様性を考えると、自然界に存在するものとして、5%ずつ両極に位置すると思えば、役目もあり一概に否定もできません、でも身内から出たものなので、こちらから修正を求めることができて、それはそれで、よかったと思います。サラリーマンをしていた時の、言葉が通じないようないろんなタイプの人の中で自分は自分で生きているという経験が活きていると感じます。

 自分にとっては、自然に、息をするようにはじまった「あきたこまちR」への全量転換を見直すように求める活動ですが、直観の根底にある理由は「違和感」だと思います。ことばの詭弁(国語教育の方向と反していないでしょうか?)、安心かわからないものを、ひのき舞台でセリフを言っているようなお気持ちで「安全です」といってのける高学歴の県庁勤務のおじさんたち、鉱物資源が豊富だったために1000年以上懐柔作戦と脅し作戦で蹂躙され続けた秋田県の人々の根底にあるものが、先住民族と移住者の混在しているうえでの思想を感じる点、大自然に呼応してできあがっているアイデンテティなど。いろんなことを感じるピュアな秋田県でこの問題に取り組むことは、不思議な感覚です。印鑰さんが言っていることが正論なので、暗い道の明かりのように、助かります。

 「違和感」について、自然界から学んできたことを思いますと、野生動物が畑で違和感がない無施肥のものから食べる点です。野生動物は何が安心安全か、わかっているのです。また、違和感があるものに害虫がやってきて食べてくれるものだという自然栽培の理論もあります。リトマス紙のような野生動物に一部食べられても差し出していっしょに生きていくと全面荒らされないこともあります。多様性のバランスが働いて異常発生したしたあとは次の天敵がやってくる様子は時間軸を変えてみると微生物が醸されていく樽の中のようです。巨視的にみると興味深く、この問題が人の心に及ぼす行方すらも、自然の法則に沿って進んでくれと祈るような気持ちでいます。

 このたび、勉強会を開催してくれたオーガニック農家たそがれファームさんは、行政と敵になるのではなく、自分たちの取り組みとして、必要なことをしていきたいといわれました。行政の担い手が問題の違う解決もあるということに目をやることができず、「安全だ」とシステムにのせて推進していることは驚きです、が、この問題を取り組むことは、「放射線育種した米をオーガニックとする日本の国家的誤認」をほんとうに世界をリードしているつもりで外に出していくのか? 強国からされることを弱国に押し付ける構造も持つ日本ですが、人口減少国に転じて弱国になる可能性がある日本を維持運営するのに、はたしてこんなことでハンドルさばけるのか? 政治も経済も、考え方を変えないと、国を維持できないのでは? と、この問題を知らせながら、だいじに見守り続けていきたいと考えています。

どんなことを実現したいと思っているか?


①学校給食をオーガニックにしていくときに、「命が大切だから子供たちにオーガニック給食をたべてほしい」というたくさんの人々の願いを一緒に届け続ける仕組みを残したいです。
②放射線育種米をできるだけたくさんの人々に知らせてわかり考えてもらうように活動していきたいです。
③工業型農業ではない農業の実践者となり、みつばちを含めいろいろな生き物が共存できる場を作る人と協力して、のべ面積を広げたいです。
④気候変動に強い「力がある種」を、たくさんの人々と分かち合い、オーガニックの農的活動をしている人と連携していきたいです。
⑤オーガニックな活動をする人と助け合えるコミュニティを秋田県につくりたいです。


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